森の学校_山林調査その1
今回の森の学校講義は、『山林調査』についてでした。林業では森林整備をするにあたり、必ず事前の調査を行います。
どんな種類の木が植えられているのか、天然林なのか人工林なのか、林齢はどのくらいか、人工林の場合、面積当たりの材の量(蓄積量)はどのくらいか、所有者ごとの境はどこかなどの状況把握をするためです。
そのうえで、『どんな整備をしていくのか』ということを決定するために、その森の50年、60年先の未来の姿を思い描きます。
森林の状況を把握するためには様々な方法を駆使します。
まずは地域の人々からの情報をもとに、大体どのあたりの森林が整備を必要としているのか当たりをつけます。その後、航空写真などで森林を俯瞰的に観察し、その森林が宝典(地番などが記載されている古くからの地図)ではどのような区分けになっているかを調べます。そして、等高線の書かれた地形図を見て、実際の尾根や谷、斜面の緩急などを確認してから、最終的に現地へ足を運び、これまで調べた情報が正しいかどうかの確認や、地図や写真からは得られない情報も集めてきます。

特に実際に現地へ行く『現地踏査』では、写真などではなかなかわからない所有者境を様々な条件から見極めていきます。
何となく森を眺めていても所有者境は全くわかりませんが、昔の人々が山林の区分けをどのようにしていたのかを知ると、少しずつ境が見えてきます。例えば、都留では昔、段々畑だったところに木が植えられているケースがかなり見られます。ですから、段差がそのまま所有者境であることが多々あります。

また、所有者によって植えている樹種が異なったり、同じ樹種であっても林齢が違ったり(=植えている時期が違う)、枝打ちをしているか、間伐をしているかなどの施業方法が違うなどによっても境を見分けることができます。
私は日頃の業務の中で、経験豊富な職員と共に調査に入りますが、その鋭い観察眼により境を決めていく職人技には感動します。一見するとなんのヒントもないように見えるのですが、ちょっと角度を変えて見ると、ある程度の直径の木が明らかに直列していることがあります。境の目印として植えられている木は、間伐の際にも伐採しないことになっているので、他の場所はランダムに生えているように見えるのですが、境木(さかいぎ)はきれいに並んでいることがあります。
また、スギやヒノキが植えられている森林の尾根に、突然アカマツやモミなどの別の樹種が現れることがありますが、それは境の目印として、意図的に違う樹種を植えているということもあります。
いずれにしても、こういった複合的な条件を総合的に判断して境を決めていく技術は、豊富な経験により培われるものであることは間違いありません。当たり前ですが、『林業は1日にしてならず』です。