搬出間伐
今回はいよいよ立木の伐倒です。前回練習した『受け口』と『追い口』を使い、実際に生きている木を伐り倒しました。座学では、『伐った木をそのあとどうするのか?』ということを学んだのですが、伐採から搬出、その後の木材利用ということを考えたとき、大きな課題が見えてきます。
現在、日本の森林は国土の約7割を占めており、森林面積は2500万ヘクタールで、過去40年近く面積の増減はほとんどありません。それがどういうことかというと、植えられている樹木たちはどんどんと成長していきますから、森林蓄積量は毎年増加しているということです。森林蓄積というのは、木々の幹の体積のことで、言い換えると森林資源量ということになります。つまり、このまま放っておくと、森林蓄積はどんどん増え続けていくということです。
※グラフは林野庁HPより
日本の森林は今、伐採適齢期を迎えています。伐採し、伐った木を『搬出』して、その木材を活用することがそもそもの目的ですから、我々は『間伐』と、伐った材を運び出す『搬出』という作業をセットで行います。
搬出と一言でいっても、木材を山奥から運び出すのは簡単ではありません。まず、調査・測量をし、搬出するための作業道を作ります。そして、樹木の伐倒・集材・造材をし、大型のトラックなどに積み込み、運搬します。これらの作業には多くの重機や車両を使用し、かなりの時間と労力を要します。
効率のよい搬出作業のためには、伐倒と造材の高度な技術が求められます。伐倒では、重機との連携プレーとなりますので、重機で引き出しやすい方向に倒し、なるべく重なり合わないよう倒します。また、残存木をできるだけ傷つけないようにし、伐った木は、その場でチェーンソーを使い、可能な限り造材を行います。枝を根本(枝座)の部分までしっかりと落とし、用途に合わせた既定の長さプラス10㎝に玉切りします。この作業が材の価値を決めますので、木口は真っ直ぐ、裂けなどが生じないよう注意して造材します。
このように人の手と重機により、多くのコストをかけて搬出しても、実際には木材価格が低く、その後の集材・運搬をいかに効率よく行うかというところが、経営収支のバランスの決め手ともなります。
日本は森林も少子高齢化の問題を抱えています。伐採適齢期を過ぎて太くなりすぎた木は、用途が少なく価値も下がります。伐っても採算が合わないので、伐らずに放置されるという悪循環が続くことは、環境にとっても良くないし、何より森林の持続可能性という観点では、危機的状況といっても過言ではありません。
『適切な時期に間伐をし、伐った木を使う』ということが、一番理想的な形ですが、伐った木を使うためには、材を運び出さなければならず、そこには相当の労力とコストがかかり、林業従事者たちはそのジレンマに苦しんでいます。
これは簡単には解決しないのですが、ひとつの手段として、国産材の価値を見直すということが大事だと思います。どこかで根本的な木材に対する考え方を変える努力をしなければなりません。日本の森林は、今伐って、植えることをしなければ、未来によい形で残すことが難しいと言われています。
みんなが『20年、30年後の日本の森林をどうしたいのか』ということを真剣に考えなければならないと痛感した講義でした。
執筆者:辻