シカたちとの闘い
シカは古来日本列島に多く生息し、食用として、または毛皮の利用など人の生活に密接に関わってきましたが、昨今、その個体数が増え、自治体等の対応も追いつかないのが現状です。
林野庁によると、2018年度はシカによる森林被害面積は全国で約4000ヘクタール(東京ドーム約850個分)となっており、野生鳥獣による森林被害全体の7割を占めるそうです。
都留市は、市の南西から北東に流れる桂川に沿って、急峻な山と深い渓谷が存在し、その合間の平地に町が形成されています。そのため、里(まち)と山がとても近く、住宅や市街地のすぐ裏の山からエサを求めてやってくるシカをはじめとするイノシシやサルなどの食害が深刻です。
見た目はかわいいニホンジカですが、林業や農業にとっては天敵です。写真はシカに皮をはがされたヒノキです。シカは植栽したばかりの若芽を食べてしまったり、エサの少ない時期には樹皮をはぎ取って食べたり、雄ジカは角をこすりつけたりして、樹木が枯れてしまうこともあります
対策として、写真のように植栽した苗木にネットをかぶせたり、成長した樹木にはテープを巻いたり、防護柵を設置したりしてシカから樹木を守りますが、こういった取り組みは、相手が野生動物ですから、なかなか思うようにはいかずイタチごっこです。
こうしてシカが増えてしまった理由のひとつには、戦後、全国で植林地が増え、シカの生息環境がよくなったことや、温暖化で地域によっては積雪量が減り、越冬できる個体が増えたということ、狩猟者の減少などに見られるように、昔ほど人が山の資源を必要としなくなり、山に入らなくなったことなどがあるようです。こういった様々な要因を考えると人間の生活様式の変化が招いた結果と言えなくもありません。
『生物多様性=Biodiversity』や『人と自然の共生』と言葉では簡単に言えますが、野生鳥獣の保護管理や、個体数の調整というのは、それぞれの立ち位置により、考えること、とる行動は様々だということについて深く考えさせられる一場面でした。