枝打ち
林業一年生も活動2年目に入り、ほぼ毎日山に入っていた1年目と違い、様々な新規事業の企画や組合の外の団体・個人との協力関係を構築すべくあちこちを飛び回っている今日この頃です。そういうわけで、このブログを更新することがめっきり減ってしまったのですが、久しぶりに『枝打ち』という林業らしい作業を経験したのでその様子をお伝えしたいと思います。
今回、枝打ちをしたのは、植栽から8年目のヒノキです。枝打ちには主に二つの目的があります。一つ目は、無節の柱材や高級内装材などの高品質な材を作ることです。無節材というのは、読んで字のごとく節のない材です。そもそも、なぜ節ができるのかということをみなさんは知っていますか?実は、枝の生えているところが節になりますので、木の成長と共にその枝を落とすことで、節が表面には出ないきれいな材となるということです。
枝を落とすことで節がなくなるという仕組みは、下の図のように、切られた枝が数年かけて次第に幹の中に埋もれていくことから、表面には節が出てこないということです。
【節の巻き込みのしくみ】
ふたつ目の目的は、林内環境(光環境)の改善です。枝を落とすことで、光が林内に差し込むことになり、林床には下草が生え、より強い土壌を作ります。


今回の 枝打ちの実際の作業は、ノコギリで1.5m以下に生えている枝をすべて落とす作業となります。かなり地際まで枝が生えているため、見落とすことがないように注意しながら作業をします。枝の基部が少し盛り上がる感じになっているのを見たことがあるかもしれませんが、これは枝が幹に接している部分に養分が余分に与えられているためにできると言われており、それを枝隆(しりゅう)と呼びます。枝を切る際には、比較的細い枝は幹にできるだけ接して平行に切断し、太めの枝で枝隆があるものは枝隆を残した形で枝を落とします。
ひとつひとつ手作業で丁寧に枝を落としていくことで、40年、50年後にその木の価値が上がることを考えるととても大切な作業です。枝打ちの善し悪しが材価に大きな影響を与えるとも言っても過言ではありません。それにしても、切ったところ(ケガをしたところ)を自然と飲み込んでしまう樹の生命力に神秘的なパワーを感じます。このヒノキたちが収穫される頃に枝打ちをした自分たちはこの世に存在していないかもしれないと考えると、長い年月をかけて森をつくる林業というしごとの尊さを感じずにはいられません。
執筆者:辻 康子