森の学校~歩道作設~
これまで林業の1年間のサイクルに沿って、夏の下刈りから始まり、調査・測量、間伐、枝打ち、地拵えまで学び、今回は歩道の作設、そして残すところは植栽というところまできました。
これまでも林業は木を植えたら終わりではなく、健全な森を守っていくためには、定期的な手入れや作業があり、そのほとんどが昔と変わらず人の手によって行われるものだということをお伝えしてきました。そういった様々な作業で人が山に出入りするためには、『道』が必要です。林業での『道』の役割は、木材の搬出、山林の見回り、通勤路、散策路などが主な役割ですが、もちろん、その役割によっては、人の手だけではなく、重機を使って作設されます。木材搬出のためには、3m幅程度の作業道を2tトラックや重機そのものが走ったりしますので、道の強度もそれに合わせて頑丈なものである必要があります。
基本的な作業の手順は、まず山林の把握からです。現地踏査で地形、樹種、林齢、蓄積量、所有者の境、思い描く森の未来の姿などを踏まえたうえで、道の線形を決めていきます。
黒線で示されている道は尾根を通ります。尾根は元々地面が固く、地形の変化が少ないため、道が作設された後も壊れるリスクが低いことが予想できます。一方で、赤線で示された道は、傾斜をかわすために斜面をジグザグと緩やかな谷や尾根を横切るように道が通ります。実は道の天敵は『水』です。尾根に対して谷(沢)は水が走りやすく、地形の変化が多いことが予測され、道が崩壊するリスクも高くなります。ですから、道の線形を考えるときは、ただ作業の効率だけで決めるのではなく、いかに水をかわすかということも重要なこととなります。
線形が決まったら、いよいよ作業道の作設となりますが、道の構造はどうなっているのでしょうか。
まずは、切り土部分の土を斜面から切り取り、盛り土の部分に入れます。その際、枝葉や表層の土を取り除いた心土(しんど)だけを切り取ります。その理由は、枝葉や根などが盛り土に入っていると、やがてそれらは土の中で朽ちて、そこに空白部分をつくり、地中がスポンジ状になり強度が弱くなるからです。
次に盛り土部ですが、一番下の床掘(とこぼり)と呼ばれる平らな場所を作ります。そこから、30㎝ずつの層を作り締め固めます。
作業道作設の基本は、低コストで自然に優しく、耐久性のある道を簡易に作成するということです。なるべく現地で調達できる資材を使いますが、必要以上に土をいじったり、木や根っこを傷つけないということに留意しなければなりません。
今回は雨天のため、実際の歩道作設作業は体験できなかったのですが、森林組合の施業地で既に作設された作業道を見学に行きました。歩道沿いの丸太の横木や水を外に逃がすための水切りなどを実際に見て、講義で学んだ内容を確認することができました。
執筆者:辻康子